ハートの袋

10年程前に出会ったA子さんのお話しです。
A子さんは、私と会うたびに、口から出る言葉は不満ばかりでした。
とても整った顔立ちをされていて、いわゆる美人さんでした。
私はいつも
「笑顔だともっと可愛いのに…」
と思って、どうしてあんなに不満ばかりが口から出るのか不思議でした。
「A子さん、あなた、せっかくの美人さんなのに、もったいないわね!!」
と、言ってしまいました。
「えっなんで?」
と聞かれたので、
「あなた、いつも楽しそうではないから…お付き合いをしているHさんに、いろいろ気遣いをしてもらっているのに、文句ばかり言って…どれだけ彼にしてもらったらたりるの?きっと、あなたのハートの袋が大きすぎるのではないの?彼の思いやりに感謝はないの?」
とお聞きすると、
「私のハートの袋は昔から大きくて、深くて、人にどれだけ愛されても、愛情をいっぱいもらっても、いくらでも、どんどん詰まっていって、足らないの。足りることがないの…」
私は、
「ハートの袋が小さい人だと、少しの愛情や思いをもらっただけでも、袋がすぐにいっぱいになって、『こんなに沢山の思いをいただいて、いいのかしら?』と、ニコニコできて、嬉しくて…感謝でいっぱいになれるのに。A子さんは、生きづらくて、これから生きていくのが大変よね。ハートの袋が大きいうちはまだ良いけれど、欲張りも過ぎるとハートも破れてしまうかもね。そうなったら元も子もないわね。もう少し、彼に感謝して、彼の気持ちを汲んであげないと。」
と、そのような事を言った覚えがあります。



それからしばらくして、A子さんは、Hさんとしあわせな結婚をされていかれました。
先日、約10年ぶりに町でA子さんとばったりお会いしましたが、とても元気な笑顔で声をかけてくださいました。
心に残る方だったので、元気なご様子にホッと胸をなでおろしました。
よかったです。
幸せなご様子でした。