桃源郷

穏やかな日差しの中、ピンク一色の芝桜の絨毯に真っ白なユキヤナギが斜面いっぱいに広がっている岡崎市美術博物館に行ってきました。
「桃源万歳!」〜東アジア理想郷の系譜〜が開催されていました。
パンフレットによると、桃源郷とは、はるか昔、5世紀の初めに中国の詩人<陶淵明>が憧れの地・理想の世界として詠った理想郷だそうです。

ある日、桃の花に誘われて、一人の漁師がぽっかりと時間が止まったかのような村里に迷い込みます。
そこは、仙人が居るのでもなけれが、珍しい風景が広がっているのでもなく、ただ、美しい池と豊な桑畑と竹林があり、子供から老人まで、皆、犬や鶏と共に、のどかに暮らす、穏やかなで小さな世界でした。
外の世界を知らない村人は、漁師を大いに歓迎します。
やがて、帰路に着いた漁師は再び、桃源の村里を目指しますが、二度と辿りつくことはできませんでした。

桃源郷は、日本にも奈良時代に中国から伝わり、それに感化された與謝蕪村、池大雅、谷文晁などが絵に表したり、近代の富岡鉄斎夏目漱石小川芋銭小杉放菴らが桃源郷への憧憬・田園風景の絵画などにしていたようです。それらが陶淵明のものと一緒に、沢山展示されていました。
それぞれに感じた桃源郷が描かれ、それらはとても素晴らしく、ほんの一時でしたが、せわしない日常から離れ、桃源の夢のような、絵の中に飛び込むことが出来、楽しかったです。


今日見た桃源郷の風景は、昔見た、懐かしい山里の中にあったような気がします。
そんなことを思った時も、日常を一瞬わすれ、ほっとした気持ちになりました。


意外と近くにそれぞれの桃源郷はあるのかもしれませんね。